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天職人(2022.6)


天職人~いのち輝かせて~

病院清掃業

「働く喜びに導かれて」

江戸川支部 石井 康夫(50歳)

石井康夫さんは、病院清掃業社に務 めて、四年目を迎えました。 石井さんは、 ビル管理会社に所属し 都内の病院に常駐する清掃員として働いています。 仕事 は外来の受付開始前 の午前五時半に始まります。 主任を務 める石井さんは四人のパートのスタッ フと共に、 建物の地下二階から地上四 階の全てをめぐります。 まず、 手術室やレントゲン室などの病室のゴミ収 集、床の清掃、 クロス掛け (雑巾掛け)、 モップ掛けなどを行い、さらに退院さ れた後のベッドの清掃の他、病院側か ら依頼された清掃など、 その仕事の内 容は多岐に亘ります。

 

石井さんがこの仕事に就いたきっか けは、義兄がビル管理の仕事をしてお り、 病院清掃業の主任が定年退職となるため、後任者を探していると声をか けてくれたことからでした。

実は石井さん、以前は同じ東京第六教区の田中喜夫さんが経営する製本会 社で二十八年間働いていましたが、 会 社が解散することになり、 平成三十年 八月に退職しました。


その後、 お世話になった得意先の御礼への挨拶 回りや、地元や会社の氏 神様へ御礼の参拝をし、 さらに御霊地への御礼参 りなどをして二ヵ月半が 過ぎ、そろそろ就職をと 考えていた頃、 立教九十 年の秋季大祭から帰宅し た夜に病院清掃業の話が 来たのです。

スムーズに再就職が決 まったものの、大変だったのは「前任者からの引き継ぎ」でし た。職人気質のその人から「一度聞いたことは二度聞くな」「目で覚えろ、 体で覚えろ」と厳しく指導され、加えて相手は東北なまりで聞き取るのも一 苦労でした。 あまりの辛さに、一ヵ月 くらい仕事の夢ばかり見たそうです。 辞めることも考えていた石井さんです が、簡単に辞めるのも悔しかったの で、覚悟を決めて相手の懐に飛び込む ことにしました。

まず、相手が何を言おうとしている のか、 クイズを答えるように受け取ろ うと考え、また「とにかく相手の言う 通りにしよう」と覚悟を決めたのです。 すると次第に相手も心を開いて、お酒 を飲みに誘われるくらい可愛がっても らえるようになりました。 実はその人は三十年主任を務めた人であり、そ れを実質三、四ヶ月で仕込もうと必死だったのでした。 そして、退職の際に は 「あなたが後任者で良かった」と泣 きながら言われたそうです。 「私は本当に師匠に恵まれました! 振り返れば、前職入社の頃、上司だった田中さんが「どこにいっても恥ずか しくない人に育てる」と言って指導し てくださったのを思い出します。 また、 金剛さまの教えである 「我以外、みな 師なり」の言葉の意味を心から実感し ています。 感謝しても感謝しきれませ ん」

風通しを良くするために

主任として働くようになった石井さ んにとって一番の問題は、 清掃員同士 の不仲でした。 各自が個別で一時間ず 石井さんに不満を言うぐらいの状態 で、これを改善するべく、 「小さなこ とでも、不平不満でも何でも良いから報告、連絡、相談をしてほしい」と伝えました。他のスタッフは年齢的にもキャリア 的にも上という中で、 石井さんは、 必 要最低限の指示命令だけにとどめ、 清 掃の改善策などの意見を求めるように しました。 するとスタッフが意見を述 べるようになり、仕事に対しても積極 的に取り組むようになりました。

 

また、この他に石井さんは、 入社し てから病院側の信頼を得るために、 依頼があれば断らず、 就業時間は十五 時 に終わりますが、日報や病院側から求められる要望に対応するため自ら一時 間残業しています。 そうした積み重ねによって、 清掃員と病院側とのコミュ ニケーションが図られ、風通しの良い 環境を作ることができたのです。 さらに「クレームがあったら、喜ん で受けています」と石井さん。


クレームを言われたら不快な気持ち になりますが、 それを自分たちの成長 に繋げるチャンスとしてみんなで受け とめ、どんなクレームでもスタッフ間 で共有しています。

そして、現場で大切にしているのが 「当たり前のことを当たり前にきちん とやる」ことです。

それは、院内の各区域によって清掃 の仕方も違うので、 それ に合わせて使用するタオ ルも色分けして清掃する ことを徹底しています。 また、病院には、 コロナ ウイルスやインフルエン ザなどに罹患した人が出 入りするため、清掃する 時は必ずグローブやマス クを着用し、区域を移動する際には全部捨て、 清掃方法にも気を付けています。

作業では、女性が水回り、男性が床、 ゴミ取りなど担当が分かれています が、最終的には各所の清掃を誰でもできるように改革をしています。 その取 り組みが功を奏して、最近では自分の 担当ではない所でも積極的に「やります」 という声が挙がるようになり、 その変化を喜んでいるそうです。

 

習慣的に行っていたことを変えていくのは大変なことです。しかし石井さ んは、何をどのように変えれば向上するのか考えることも、改善に向けた取 り組みも、仕事の楽しみの一つであると言います。

そして、今、石井さんが力を注いでいるのが、「病院清掃受託責任者」の資格取得で、日々勉強に励み、努力奮闘しています。 今後も更なる活躍が期 待されています。

 

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